12A猫で学んだこと-Memoir-

...What are you learning now?

5人2W猫又2CO、狼の「組織票」を封じることで村勝率を1.2倍にできる

導入と結論

昼時間5人2W残り、猫又2COの状況から、猫又決め打ち ⇒ 最終日2グレー吊りの進行があります。
この際、

  • 村が投票を合わせられないと、組織票が可能な分、狼陣営が有利となる

という主張があります。

狼陣営の「組織票」に対する対抗策は以下があります。

  • 指定役生存時に吊る人を決定しておく
  • 吊り先をランダムに決め、決定者に全員が投票することを村側のプロトコルとして規定しておく。

などです。

しかし、実際の村ではあまり上記の作戦を採用する人をみません。
また、吊り先のランダム決定戦略は実際の村での同意を得るのは難しいでしょう。
したがって、自分も含め多くのプレイヤーは 組織票 の要素を容認して、ゲームの進行をしていることになります。

このエントリでは、次のことについて論じます。

  1. 5人2W猫又2COで、狼側の組織票の要素は狼有利に寄与するか?
  2. 組織票が狼有利に寄与するのであれば、どの程度の寄与があるのか?

パズルとして簡略化した問題を解くことで、

  1. に対する解は、Yes であること、
  2. に対する解は $\frac{1}{24}$ 、狼勝率を上げる(村勝率を下げる)

であることが分かります。 吊り先をランダムに決めたときの勝率は$\frac{1}{4}$なので、
組織票を使わせないことで、

\begin{align} \frac{\frac{1}{4}}{\frac{5}{24}} = \frac{6}{5}
\end{align}

だけ、村勝率を高めることができるとわかります。

StudentSとしては、この事実が分かれば十分です。
パズルの結果からどのようなことを考えるか、感じるかは、プレイヤーの選好次第です。
だけど、せっかくなので無理をして、今の自分の"好み"の主張を作るためこの事実を使ってみたいと思います。

最適戦略を目指さない私たち

プレイヤーに対して次の質問を投げかけることを想像します。

  1. ランダムで吊り先を決めるより、$\frac{1}{24}$以上の高い確率で人外を的中させ、また、他の村人陣営に対してそれを説得させることができますか?
    1. の解に対して、Yesの場合、その言明が正しいことを客観的に主張できますか?
  2. / 2. に対して、Yes という答えを投げかけられるPLは多くないと思っています。
    自分の答えは間違いなくNo です。

それにもかからず、ランダム吊り先決定戦略を取らないのは、
勝率を最重要視する立場からは不合理な行動をとっていることになります。

今の自分はそれでいいと思っているのです。
だって、「ゲームの過程を楽しむのが人狼ゲームに参加する目的」 だから。

ゲーム終了後「進行が悪かった」という過度な批判はバランスを欠きます。
だって、「自分たちが最適進行を取れない時」がたくさんあるのだから。

「ランダムで吊り先を決める」ことを「ゲームとして面白くない」からやらないのであれば、
感想戦で、「ゲームの面白さをなくす」ような暴言を使うことは、一貫性がないですよね!

...こんなところでしょうか。 かなり強引な論理展開も含んでおりますし、意図的に誇張表現にしています。
そもそも、パズルの事実と現実の村での戦略の対応付けの自由度は高いので
上記のような自分の主張が納得感を与えられることには大きな疑問の余地があります。

あとがき

非常に久しぶりに人狼のエントリを書いた気がします。
計算自体は、前にやったことの焼き直しになっているかもしれませんが、
昔よりも、文章を書くことは上手くなっている...といいなぁ と思っています。

導出の過程の中で気になっていることは、
「組織票の要因をなくしている」 = 「村側のPLが同じ人に投票できる」として扱っている点です。
この仮定についての反論は、いくつかあるような気がします。

さてさて、今年も1年お疲れ様でした。
Merry Christmas! 良いクリスマスをお過ごしください。
そして、来年が皆様にとって、よい1年になりますように!

詳細

問題

5人、猫又2CO(猫狼)、3グレー(狼狼村)の村勝率を求める。

組織票要因なしの場合 (吊り先ランダム選択、共通投票戦略)

猫又吊り -> グレー吊りでランダム選択戦略を採用する。

\displaystyle \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{4}

より、村勝率 \displaystyle \frac{1}{4}

組織票要因を考慮した場合

  • 猫又吊り -> グレー吊りの順番で吊りを行う
  • 条件が対等なグレー・猫又CO者には、各プレイヤーがランダムに投票する
    • 重要な点は村人が同じPLではなく、異なるPLに投票する可能性がある点

上記仮定の下で、ゲームの勝率は以下の確率の設定(混合戦略の設定)で決まるとする。

狼陣営の戦略は

  • $a, 0 < a < 1$: 猫吊りの際、グレーの狼が真猫に投票する確率

村陣営(猫又)の戦略は

  • $b, \frac{1}{2} < b$ : 最終日、真猫に投票したグレーに投票する確率
備考

狼側の戦略の設定として、厳密には
4人夜、グレーの村人に真猫又投票者と狼猫又候補投票者がいた場合に、 「狼猫又候補投票者を噛む確率」を設定する必要がある。

しかし、$\frac{1}{2} < b$ の条件で考えると、
狼視点、常に狼猫又候補投票者噛みが良いという結論になるため省いた。

計算

勝率$W(a, b)$は下記の式となる。

\begin{align} W(a, b) = a \left( \frac{1}{4} b \right) + \left( 1 - a \right) \left( \frac{1}{4} \times \frac{1}{2} + \frac{1}{2} \left(1 - b\right) \right) \end{align}

$a$, $b$ について、偏微分をした結果は下記の通り。

\begin{align} \frac{\partial W}{\partial a} = \frac{3}{4} b - \frac{1}{2}, \end{align}

\begin{align} \frac{\partial W}{\partial b} = \frac{3}{4} a - \frac{1}{2}. \end{align}

したがって、

\begin{align} \min_a \left( \max_b W(a, b) \right) = \max_b \left( \min_a W(a, b) \right) = \frac{5}{24}.
\end{align}

(ナッシュ均衡点が、$(a, b)=(\frac{2}{3}, \frac{2}{3})$)

これが意味することは、
狼側が戦略を決定した後、村側が戦略を決定する という順番でも、
村側が戦略を決定した後、狼側が戦略を決定する という順番でも、
村勝率$\frac{5}{24}$ ということになる。

以上より、 組織票要因を考慮した場合のゲーム設定と、
組織票要因を考慮しない場合のゲーム設定での勝率の差は$\frac{1}{24}$であると算出できる。